巣鴨教会聖書研究会 創世記50

2007年2月18日 渡辺善忠

 

1.ヤコブの埋葬

 創世記の終章には、ヤコブが埋葬された出来事が詳細に伝えられています。この中では特に、40日に渡って行なわれた「防腐処置」(2節)がエジプト的な礼式として目をひかれるのではないでしょうか。この儀礼には、永遠の命を願って遺体をミイラとして保存したエジプトの古い習慣が反映されています。また、壮麗な葬列やカナンでの葬りの様子は、ヨセフの強大な力を伝えるために記されたと考えられます。

 さらに、ヤコブがカナンの墓地に葬られた記事、兄弟たちとの和解、そして、死を前にしたヨセフが自分の遺骨をカナンに携えるように願った一連の出来事には、ヤコブの一族がカナンに帰る伏線の意味を含んでいます。この場面ではイスラエルの人々が虐げられていないにも関わらず、カナンに帰る伏線が置かれていることから、創世記の著者は、ヨセフ物語のしめくくりにおいて、「エジプトでのハッピーエンド」ではなく、「約束の地カナンへの希望」というテーマを示していると思われます。

 私たちはこのテーマによって、私たちの地上の歩みが、御国に至るまでの「寄留の時」であることを示されると共に、地上の歩みだけにとどまらず、死の後に至るまで私たちを守り導いて下さる神の救いのご計画を心に留めたいと思います。

 

2.創世記を読み終えるにあたって

 創世記全体を通して繰り返し学んだように、この書物は、イスラエルの人々が新バビロニア帝国との戦争に負けて、捕虜としてバビロンに連れて行かれた時期に編纂されたため、イスラエルの存在意義が示されている歴史書であると言えましょう。

 私たちは今、創世記全体を振り返り、アブラハムへの約束に従ってイスラエルの歩みを導いておられる神の御業が、創世記全体の主題であることを思い起こしたいと思います。確かに個々の章を見ますと、神について直接ふれていない章や、エピソードのような物語もありました。しかし、創世記の著者は、「神の救いの御業」という大きなテーマに従って、周到に練られた構成に従って全体を編纂したと考えられます。

 私たちはこのことをさらに大きな視点で理解し、聖書全体が、神の救いの歴史を伝える書物であることを心に留めたいと思います。私たちにとっては、新約聖書が最も大切な信仰の書であることは言うまでもありません。しかし、神の救いの御業を知るためには、旧約も含めた聖書全体を学び続けることが大切です。私たちはこのことをおぼえて、神が御子イエスを遣わし、全ての人々を救いのご計画に招いて下さった御業の礎には、イスラエルの歴史があることを心に刻みたいと思います。

 

3.私たちへのメッセージ

地上の全てのものを創造された神は、今も私たちの歩みを導いておられます。

創世記を読み終えるにあたって、私たちの全ての歴史を司っておられる神の御業を信じると共に、古からの救いの約束に従って、私たちに豊かな祝福を与えて下さる神に感謝を捧げつつ、学びをしめくくりたいと思います。