巣鴨教会聖書研究会 創世記49章

2007年1月21日 渡辺善忠

 

1.全部族への祝福の継承

 49章の場面からは、イサクがヤコブを祝福した出来事が思い出されるのではないでしょうか(27章参照)。このように、地上を去る者が祝福を与える出来事が繰り返されていることから、創世記の著者は祝福権の継承を尊重していると考えられます。

 また、2〜47節の詩は創世記が編纂されるよりもかなり前に作られたと考えられることに加えて、詩の内容が部族の力関係を示していることから、創世記の著者はこの詩を、後の部族を位置づける政治的な目的のために収めたと思われます。この意味を前章との関係で考えますと、48章ではおもに、初期のイスラエルで中心的な存在であったヨセフの部族のことが記されているため、創世記の著者は、他の部族も祝福を受け継いでいることを示すために、古い詩を引用したと考えられます。

また2226節には、他の子孫に比してヨセフのことが詳細に記されているため、この部分は、創世記の著者が付加した可能性が高いと考えられています。このことから、創世記の著者はこの詩によって、ヤコブの祝福権がイスラエルの全部族に継承されたことを示すと共に、ヨセフを特に顧みられた神の選びを強調していると言えましょう。

 

2.信仰の生涯をまっとうしたヤコブ

 私たちはこの場面で、今際のヤコブが子どもたちに祝福を与えると共に、子どもたちを神の約束に結びつけることに努めていることを示されたいと思います。なぜならイスラエルの人々は古代から現代に至るまで、家族が信仰を受け継ぐことに大きな力を注いでいるからです。私たちはこのことから、地上を召される時には、財産などの目に見えるものと共に、信仰が相続されることも心に留めるべきでありましょう。

 ヤコブがこの場面で、子どもたちを神の約束に結びつけるようとしたことは、2932節の葬りの方法にも示されています。なぜならヤコブは、埋葬の場所としてパレスチナの地を示すことによって、子どもたちに神の約束を思い起こさせているからです。

 また、ヤコブが死に際して、子どもたち全員に祝福を与えていることにも大切な意味があります。なぜならこの出来事には、もともと好き嫌いが激しかったヤコブが、年老いた後に寛容になったことが示されているからです。私たちはこのことから、信仰をもって生涯をまっとうしたヤコブの姿を心に留めると共に、この後に、全ての子どもたちの歩みを「部族」として導かれる神の御業を辿ってまいりたいと思います。

 

3.私たちへのメッセージ

ヤコブは死を前にして、全ての子どもたちに神の約束を伝えるように努めました。

私たちはこのことから「教会」という神の家族において信仰を継承することの大切さを示されたいと思います。また年老いて寛容になったヤコブの姿にならって、穏やかな信仰者として生涯をまっとうすることを祈りつつ歩んでまいりましょう。