巣鴨教会聖書研究会 創世記30章〜31章

2005年7月17日 渡辺善忠

 聖書輪読箇所:30章1〜13節、25〜36節

        31章1〜16節、22〜32節、45〜54節

 

1.子供を生むことに関する諍い

 30章には、ヤコブの子供を生むことについて、レアとラケルの間に諍いがあったことが記されています。この場面では、召使いたちも含めた人間関係が伝えられていますが、「お前の胎に子供を宿らせないのは神ご自身なのだ」(2節)という御言葉には、複雑な人間関係を超えて、神が子供の誕生を司っておられることが示されています。

 召使いによって子供を得る方法は古代から近代に至るまで用いられています。また、「恋なすび」(30章14〜16節)は、古代において「媚薬」として珍重されていた薬草ですので、恋なすびを巡る駆け引きの元は、民話的な素材であると考えられています。

創世記の著者は、そのような古代の風習を伝えると同時に、「神はラケルも御心に留め、彼女の願いを聞き入れその胎を開かれた」(22節)という御言葉によって、子供が与えられることが、神の働きであることを告げています。私たちはこのことから、神が今も、家畜や自然を含めた全ての生命を創って下さることを信じると共に、新しい生命が神の賜物であることを感謝して受け入れる者とされたいと思います。

 

2.神は弱い立場の人々を顧みて下さる

 この物語には、弱い立場の人々を顧みて下さる神の恵みが示されています。振り返りますと、ヤコブは、「次男」という立場でありながら、イサクの祝福を受け継ぐ者とされました。また神は、ラケルの苦しみをおぼえて子供を与えて下さいました。さらに神は、長年ラバンに虐げられていたヤコブを顧みて下さいました。私たちはこのことから、「ラバンのあなたに対する仕打ちは、すべてわたしには分かっている…さあ、今すぐこの土地を出て、あなたの故郷に帰りなさい」(31章12〜13節)という御言葉によって、虐げられている人々を顧みて下さる神の慈しみを示されたいと思います。

 また、31章には、ヤコブとラバンの財産をめぐる争いが記されていますが、この場面においては、神が、弱い立場のヤコブを顧みて下さったゆえに、豊かな財産を与えて下さった恵みが強調されていると考えられます。「神が弱い人々を顧みて下さる」という主題が、エジプトにおいて虐げられていたイスラエルの人々を救われる歴史につながることを心に刻みつつ、続く物語を読み進んでまいりたいと思います。

 

3.私たちへのメッセージ

29〜31章の中で最も大切な神学的主張は、31章1〜16節に要約されています。

この中で特に大切な御言葉は、以下の三点です。

「わたしの父の神は、ずっとわたしと共にいてくださった」(5節)

「神はわたしに害を加えることをお許しにならなかった」(7節)

「神はあなたたちのお父さんの家畜を取り上げて、わたしにお与えになった」(9節)

 この御言葉は、神がヤコブを導いて下さった恵みを示しています。私たちはこの御言葉によって、神が私たちと共に歩んで下さっている恵みを思い起こすと共に、神がご自身の約束に従って、私たちを導いて下さる恵みを信じる者とされたいと思います。