巣鴨教会聖書研究会 創世記13〜14

2004年3月21日 渡辺善忠

♪聖書朗読箇所=13章、14章13〜24節

1.神への信頼に戻ったアブラハム

 アブラハムは、12章10〜20節においては世知に頼った臆病な者でしたが、13章1〜18節においては神への信頼に堅く立つ者に戻ったことが伝えられています。私たちはこの二つの記事から、教会の信仰の父祖であるアブラハムも私たちと同じように様々な面を合わせ持つ人間であったことを示されると共に、アブラハムが神から与えられた約束への信頼に戻った出来事を心に刻みたいと思います。神がアブラハムに 与えた約束は、「土地と子孫を与える」というものでしたが(12章1〜2節)、この中の「土地を与える」という約束は13章で再度告げられています。私たちは、13章    14〜17節の御言葉によって、神が、アブラハムとロトの駆け引きと思惑をはるかに越える恵みをアブラハムに与えて下さることを示されたいと思います。

2.アブラハムとロトが袂を分けたことについて

 13章1〜13節の記事には、神の約束を信じて歩んで行くアブラハムと、自らの判断に従って歩むロトとの違いが際立っています。特に、「ロトが目を上げて眺めると」(10節)という御言葉には、ロトが自らの判断によって破滅への道を選んだことが象徴的に語られています。「ソドムの住民は邪悪で、主に対して多くの罪を犯していた」(13節)という御言葉もロトの判断に暗い影を落としています。

 また、この二人が別の道を歩むこととなった背景には、ヨルダン川流域における  土地をめぐる確執がありました。ヨルダン川周辺の土地争いは現在も続いていますが、土地の権利の典拠には今だにこの13章の記事が用いられることもあるようです。

しかし、この御言葉は決して土地の権利を主張するものではなく、土地が元来神  からの授かりものであることを指し示していると理解するほうが適切でありましょう。

3.14章について

14章の内容は創世記の中で最も解釈が困難な部分の一つです。一般に、1〜12節の系譜は物語の橋渡しの役割を担っており、13〜16節はロトに対するアブラハムの優位を示し、17〜20節には古代の祭儀的祝福の定型が反映されていると考えられています。 

特に、17〜20節に神の名が明示されていないことに対して、22節においてアブラハムが神を「主」と呼んでいる出来事には、メルキゼデクよりもアブラハムのほうが  イスラエルの神を明確に認識していることが示されていると考えられます。創世記の著者はこの記事においても、アブラハムの神への信頼を強調していると言えましょう。

4.私たちへのメッセージ

・神の約束に対するアブラハムの信頼について

  アブラハムが土地や財産を含めた全ての富を神の約束の賜物と理解していたように、私たちも日々の経済生活において神への信頼を持ち続けることが大切です。

・神の約束が示される場について

 アブラハムがベテルに戻ったことと(13章4節)、メルキゼデクから祝福を受けた出来事(14章17〜20節)には、礼拝において神の約束が示されることが象徴されています。礼拝で神の約束が語られることによって、私たちが神への信頼を新たにされることを共に祈りましょう。