巣鴨教会聖書研究会 創世記1章〜2章4節a

2003年5月18日 渡辺善忠

1.全体の構成

創世記は聖書全体の「初めに」収められています。「創世記」という名前はヘブライ語で「系図」という意味で、2章4節ではこの言葉が「由来」と訳されていますが、この言葉が70人訳(ヘブライ語からギリシャ語に訳された聖書)で「起源」と訳されたことから現在の「創世記」という書名が一般的なものとなりました。ヘブライ語の聖書では創世記は「初めに」(1章1節)と呼ばれていますが、いずれの題名も、神と人間の関わりの「初め」を指し示している言葉であると言えましょう。

創世記全体は以下のような構成になっています。

  1〜11章 原初時代の歴史

  12〜50章 族長時代の歴史

  12章 1節〜25章18節 アブラハム物語

   25章19節〜36章43節 ヤコブ物語

    37章〜50章       ヨセフ物語

2.歴史的な背景 

 創世記はイスラエルの人々がバビロンに捕らわれていた紀元前8〜5世紀に編纂されたと考えられています。イスラエルの人々は新バビロニア帝国との戦争に破れ、いわゆる知的階級の多くの人々が首都バビロニアに連れて行かれ、捕虜としてバビロニア帝国のために働くこととなりました。イスラエルの人々は、かの地において異教の神々を拝む誘惑の中にあって、いつの日かエルサレムに戻ることに希望を抱きつつ歩みました。

創世記は、そのようなイスラエルの人々に対して、神がイスラエルを創り、捕囚の中にあってもその存在を支えて下さる恵みを語ることによって、真の神ヤーウェへの信頼を持ち続けることの大切さを力強く説き勧めています。創世記の1章には、神が人間を創って下さったという私たちの存在の根本的な意味が告げられていると同時に、捕囚の地においてたくましく生きていくための希望が語られているのです(1章28節参照)。

3.私たちへのメッセージ

 ・世界は神によって創られたものである。

   創世記1章には、神が創られた地球が元々調和に満ちた地であったことが語られています。しかし昨今の環境問題や戦争などを顧みると、神が創られた世界を壊しているのが私たち人間の現状ではないでしょうか。私たちは創世記1章の御言葉によって神から地球を託されている私たちの責任を知るべきでありましょう。

・私たちは神によって創られたものである

   神は世界を創られ、私たちをご自身へと招いておられます。私たちの存在意義を突き詰めて考えると、創造論か進化論のどちらかに辿りつくと考えられますが、創世記を聖書の「初め」に収めた古の編者は、神が私たち人間を創って下さった恵みを語ることによって、困難な時にあっても、神の力に信頼して歩み続けることの大切さを伝えています。私たちは、神が私たちを創って下さり、御子イエスの十字架と復活によって私たちを救って下さり、私たちを永遠に守り導いて下さることに信頼して歩んでまいりたいと思います。