巣鴨教会聖書研究会 出エジプト記6章2節〜7章7節

2007年8月19日 渡辺善忠

 

1.召命の再確認

6章では3〜4章に引き続き、神がモーセをご自身の働きのために召した出来事が伝えられています。しかし、神との会話や派遣の内容が前よりも整えられた言葉になっているため、6章は比較的後代に記されたと考えられています。同じ内容が重ねて収められている理由については諸説ありますが、召命についてモーセに深く理解させることが最も大きな目的であったと思われます。このことを前章からの出来事をふまえて申しますと、最初の召命記事の後に、ファラオが民をますます虐げるようになった場面を経て、苦難の中を歩むモーセに召命の意味を再確認させ、預言者としてのアロンの立場を明確にすることが、6章の最も大切な目的であると言えましょう。

私たちはまた、ファラオに虐げられて神の言葉を聞けなくなった民に、神の救いのご計画を思い起こさせることも、この章の大切な目的であることを心に留めたいと思います(9節)。なぜなら、イスラエルの民と同様に、私たちも神の御業を理解することに疎く、日々の営みに追われて心が塞がれている時には、神の言葉を聞けなくなることがあるからです。私たちはこのことをおぼえて、召命の記事が重ねて収められていることによって、私たちをご自身のもとに招いておられる神の御声を、教会として繰り返し聞き続けることの大切さを心に刻みたいと思います。

 

2.系図の意味

 創世記で学んだように、旧約聖書においては、内容的に大きな区分の前後に系図が収められています。このことから、出エジプトの出来事が始まる前に、神がイスラエルの父祖たちに土地を与え、子孫を増やす約束をして下さった恵みを思い起こさせることが、この箇所に系図が収められている最も大切な目的であると考えられます。

この系図はまた、物語に登場したアロンを、祭司職の家系であったレビ族に結び付ける役割を担っています。系図がアロンのために記されたことは、系図の始まりに「彼らの家系」(14節)と記されているにも関わらず、モーセの子供たちの名前がないことに対して、アロンの子供や孫の名前が列挙されていることに示されています。このことから、出エジプト記の著者は、物語の中で「新参者」であったアロンをイスラエルの歴史に結び付ける意味で、出エジプトの前の場面に系図を収めたと言えましょう。

私たちはさらに、旧約時代の系図の理解が、新約聖書にも受け継がれていることを思い起こしたいと思います。なぜなら、新約聖書の冒頭(マタイ1章1〜17節)に系図が収められていることには、旧約時代の信仰の歴史が教会へ受け継がれていることが示されているからです。私たちはこのことをおぼえて、旧約聖書の御言葉を通して、信仰の先達たちの歴史を学び続けることの大切さを心に刻みたいと思います。

 

3.私たちへのメッセージ

 召命の意味を深く理解できなかったモーセや、日々の歩みに追われて神の言葉を聞けなくなった民と同様に、私たちも神の声を理解することに疎い者です。神はこのような私たちの思いを顧み、聖書の言葉を通して、救いの約束を繰り返し語り続けて下さっています。私たちはこの神の御業を心に留めて、聖書に収められている全ての御言葉を神の御声として聴き続けることができるように努めてまいりましょう。