巣鴨教会聖書研究会 出エジプト記1章

2007年3月18日 渡辺善忠

 

1.出エジプト記全体の内容

 出エジプト記には、神が、エジプト人の奴隷であったイスラエルを救い、パレスチナに導き、十戒を与え、民が幕屋を作る出来事が記されています。この書物はかつて、神がイスラエルを救うことが最も大切な主題だと考えられていました。しかし現在は、神がイスラエルを創る(=創造)という主題を基にして、創世記に記されている神の創造の御業と共に理解することが望ましいと考えられています。なぜならここでは、神が、奴隷(=死んでいた状態)であった人々に生命を与え、礼拝を捧げる共同体(=幕屋を作る)として再創造して下さった歴史が伝えられているからです。

 また出エジプト記が、イスラエルの人々が新バビロニア帝国の首都バビロンに捕虜として抑留されていた時代に編纂されたことにも大切な意味があります。なぜなら、国が滅ぼされて神殿祭儀ができなくなり、信仰を失いつつあったイスラエルの人々は、出エジプト記の御言葉に励まされて、再び信仰の民として歩み始めたからです。

 私たちはこの二つの歴史的な背景を心に留めて、私たちが、神を礼拝するために生命を与えられたことをおぼえると共に、神が私たちを「教会」という信仰共同体として繰り返し「創造」して下さる御業を受け入れたいと思います。

 

2.神に反抗するエジプト王

 出エジプト記1〜14章には、エジプト王がイスラエルを虐げた出来事が伝えられています。この出来事がどの程度史実であるかは確証できません。しかし、パレスチナ地方に住んでいたイスラエルのあるグループが、飢饉の際に食料を求めてエジプトに行き、子孫を増やして当地の人々の脅威となり、追われるようにパレスチナに戻ったことは間違いないと思われます。このことを史実にそくして言い換えますと、イスラエルの人々は何回かに分かれて部族や家族ごとにエジプトからパレスチナに戻ったと考えられます。その際には一回の大きな戦いではなく、多くの小さな戦いがあったはずです。このことから、エジプト王がイスラエルに大掛かりな抑圧を加えたと伝えられている背後には、小さな戦いの集積があると理解したほうが適切でありましょう。

 また、1章の前半でエジプト王がイスラエルを虐げている出来事には、14章までの出来事が先取りされています。また後半で、ヘブライ人の産婦に、生まれた男子を殺すように命じたエジプト王には、神の創造の御業に反する存在が象徴されています。

 私たちはこのことから、出エジプト記全体の出来事には、神が民を創造して下さる恵みと、それを妨げる人々が象徴されていることを心に留めるべきでありましょう。

 

3.私たちへのメッセージ

出エジプト記に伝えられているイスラエルの歴史には、神が私たちに日々生命を与えて下さる恵みと共に、私たちの内に神の創造の御業に反する不信仰な思いがあることが示されています。私たちはこのことをおぼえて、神が私たちを信仰の民(=教会)として創造して下さる恵みを信じつつ、本書を読み進んでまいりたいと思います。